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邪魔(奥田英朗)




邪魔



『及川恭子』は34歳の主婦、サラリーマンの夫、幼い子供二人と東京郊外の一戸建てに暮らしている


スーパーでパートをし、平凡だが幸福な生活を送っていた


しかし、ある日夫の勤務先で放火事件が起きた事から、彼女の幸福が揺らぎ始める


放火したのは夫なのか………?


自分達の幸福な生活はまやかしだったのか………?


悩む彼女は、スーパーのパートの待遇に不満を持つ、ある女性活動家に声を掛けられる


『九野薫』は36歳の刑事、7年前に妻を事故で亡くして以来不眠に悩み、自分と同じく遺された義母を心の支えにしていた


ある女を巡ったいさかいに関わった事から、同僚の『花村』に逆恨みされている


放火事件の調査をしているうちに、経理課長である『及川恭子』の夫を疑い捜査にあたるのだが………



ミステリー小説衝撃度数

★★★★★★★★★ 9





いやぁ~、やはり『奥田英朗』の小説はすべての作品がストーリーに関係なく面白く読みやすい


確か、この作者は書き出しだけを決めて小説を書き始める人だと思ったが、その割には話にこじつけ感がなく、スピード感を伴いながらすうっーと頭の中に物語が入って来る


金の使い込みがバレそうになり会社の倉庫に放火した夫、その入院中の夫を心配する平凡な主婦である妻は、度重なる刑事の訪問で夫を疑い始める


一方、妻と死別してしまい、悲しみのあまり睡眠障害を抱える刑事は、義母宅を度々訪れて一緒に過ごす時間をとても大切にしている


主婦の『恭子』、妻を亡くした刑事の『九野』、そして落ちこぼれ高校生の『裕輔』、それぞれの日常が重なり合いながら物語は進んで行くのだが、少しづつとは言え確実に人生が悪い方向へと向かって行く描写が読んでいて切ない


三人の主人公達の結末が気になりラストまで一気読みしたが、『恭子』が迎える最後の決断には絶句した


好き嫌いが分かれる小説だと思うが、個人的には秋の夜長に読むにはおすすめの一冊