模倣犯(宮部みゆき)
模倣犯
【第一部】
第一部では事件の被害者、警察、関係者サイドに主点をおいて物語が進行する
1996年9月12日早朝、一家惨殺事件の唯一の生き残りである『塚田真一』は、犬の散歩中に大川公園で女性の右腕を発見する
同じ公園からは、失踪したOL『古川鞠子』のハンドバッグが発見され、マスコミが大騒ぎする中、犯人を名乗る人物はテレビ局に「右腕は『古川鞠子』のものではない」という内容の電話を掛ける
さらに、『古川鞠子』の祖父の『有馬義男』の元にも犯人から電話があり、孫娘を心配する『有馬』の心を弄ぶかのように有馬を『翻弄』していく
やがて、犯人の指示で『有馬』宛のメッセージを届けた女子高生の死体が発見され、『古川鞠子』の白骨体も第三者の会社に送り届けられる
死者を冒涜するかのような犯行やマスコミに対する不敵な挑戦
そして、『有馬』を始めとする被害者遺族に対するあまりにも酷い仕打ちに、犯人に対する捜査員や一般市民の怒りは日に日に強くなっていた
11月5日、群馬県の山中で一台の自動車が崖下に転落し、事故車のトランクから1人の男性の死体が発見される
自動車を運転していた『栗橋浩美』と助手席に座っていた『高井和明』、2人共事故の為に死亡していた
連続女性拉致殺害事件の犯人達はこうして死亡したものと思われた
犯人の行動から、犯人は二人組である事が解っていたからだ
【第二部】
第二部では『栗橋浩美』と『高井和明』、及び彼らの同級生だった『ピース』を中心に物語が進行する
時は少し遡る、『栗橋浩美』は職に就かず、同級生だった『高井和明』にタカる生活を送っていた
ある時、山間の廃墟で『浩美』は過去のトラウマから衝動的に恋人と見ず知らずの女子中学生を殺害してしまう
『浩美』は同級生だった『ピース』に事件を打ち明け、対処について相談する
やがて『浩美』と『ピース』は、連続女性殺害事件を引き起こす
残酷な通り魔的な殺人者を作り上げ、山中で殺害した二名の事もこの犯人によるものであると見せ掛けるよう仕組んだのだった
やがて『栗橋』の異変に気付いた『和明』は行動を起こそうとする
『和明』の事に気付いた『ピース』と『浩美』は、『和明』を殺して連続女性殺害事件の罪をすべて『和明』に着せてしまう事を思い付く
そして11月5日、『和明』を呼び出した『浩美』は、『和明』の車に自身が殺害した会社員の死体を積み込み山中へと向かった
山中で『和明』を自殺に見せ掛けて殺し、事件の幕引きとするつもりだった
しかし、予想外な事に『和明』は『浩美』を説得し、自首するように促した為に『浩美』の心は大きく傾いた
そして、動揺した『浩美』はハンドル操作を誤って転落事故を起こしてしまい、『浩美』と『和明』は絶命する
【第三部】
第三部では再び事件の被害者、警察、関係者サイドに主点をおいて物語が進行する
警察は『栗橋浩美』と『高井和明』の自宅の家宅捜索を行う
すると、『浩美』の自宅から右腕を切り取られた女性の死体と、監禁された女性達の写真が発見され、捜査本部は『浩美』と『和明』が連続女性拉致殺害事件の犯人として捜査を進める
『栗橋』の部屋から発見された写真から、一連の事件で殺されたと認められる女性以外の姿を見付け、捜査本部はその女性の特定、『浩美』と『和明』が殺人を行っていたアジトの発見に向けて捜査を進める
しかし、和明の妹『高井由美子』は捜査本部の報告に納得がいかず、兄の無実を主張し続け、「栗橋主犯、高井従犯」説を唱えるルポライター『前畑滋子』や『有馬義男』などに接触を図るようになる
そんな『由美子』の後見人に、かつて『浩美』や『和明』と同級生だった『ピース』こと『網川浩一』が名乗りを上げ、マスコミに華々しく登場して来る
「栗橋主犯、高井従犯」説に真っ向から逆らい、「『高井』は犯人ではなく、真犯人『X』が存在する」、そう主張する『網川』」
だとすると真犯人『X』はいったい誰なのか?
真犯人『X』を巡って事件はクライマックスを迎える
ミステリー小説衝撃度数
★★★★★★★★ 9
まるで映画を観ているかのように情景が浮かぶ文章はさすが『宮部みゆき』と思わせる作品
文庫本で5冊の超長編だが、まったく長さを感じる事なく物語に集中する事が出来た
作中には心を抉られるような場面も多々あるが、中盤以降どうしても頁をめくる指を止める事が出来なくなってしまった
間違いなく、『宮部みゆき』を語る上で絶対に外せない名作だと思う
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