死神の精度(伊坂幸太郎)
死神の精度
CDショップに入り浸り、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にズレていて、決して素手では人に触ろうとしない
そんな人物がもしも身近に現れたら、それは死神かも知れない
一週間の調査の後、対象者の死に可否の判断を下し、翌8日目に死は確実に実行される
この物語の主人公である死神は『千葉』
死神の「調査部」の一員として人間の世界に派遣され、調査対象である人間を一週間に渡り観察し、そして死を見定める
対象者を「可」とした場合は8日目に死亡し、「見送り」とした場合は死なずに天寿を全うする事になる
「可」にするか「見送り」にするかどうかについて明確な基準はなく、裁定は死神の裁量に全て任される
ほとんどの調査対象は「可」となり、「見送り」になる事は極めて稀である
また、調査期間の間に対象が死亡する事は絶対にない
自らが行っている死の身定めを完全に仕事と割り切っており、人間の死にも全く興味がなく、「人の死に意味はなく価値もない」と考えている
彼が仕事の為に人間界へ赴くと必ず雨が降っており、まだ一度も青空を見た事がない
死神が素手で人間に触れると、人間は気絶し寿命も一年間縮まってしまう
死神が人間の世界に派遣される際、外見や年齢は「情報部」が事前に導き出した、最も仕事をしやすいものになる
容姿が仕事の度に変わるのに対して名前は毎回変わる事はなく、死神個々の名前は必ず、「千葉」や「秋田」など市町村と同じ名前になっている
ジャンルを問わずミュージックをこよなく愛しており、仕事の合間に時間が出来ればCDショップに行きCDを貪り聴く
その偏愛ぶりは、「人間の死に興味はないが、人間が死に絶えミュージックが無くなることは辛い」と言わせるほどである
これは死神に共通して言える事で、CDショップや音楽が流れる喫茶店に行けば、必ずといって良いほど他の死神と出会う事が出来る
音楽を偏狂なまでに愛しているのに対し、渋滞は人間が作ったものの中で一番醜いものだと考えている
人間の世界の価値観や言葉などをあまりよく理解しておらず、「雪男」と「雨男」を同じようなものだと思ったり、死神独特の人間とは違う発言をしたりする為、人間と会話する際に微妙に会話が噛み合わない事が多々ある
ミステリー小説衝撃度数
★★★★★★★★ 8
「伊坂ワールド」全開の死神ストーリー短編集
『伊坂幸太郎』は長編でこそ真価を発揮するタイプの作家だと思っていたが、この作品を読んで少し見方が変わった
読み進めるにつれ死神『千葉』にどんどん愛着が湧き惹き込まれてしまった
こんな死神になら、自分も人生の最期に会ってみたいものだ
きっと楽しい気分で死んで行けるだろう
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