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屍人荘の殺人(今村昌弘)




屍人荘の殺人



「神紅大学ミステリー愛好会」のメンバーである『葉村譲』と、「神紅のホームズ」を自称する「ミステリー愛好会会長」の『明智恭介』は、同じ大学に通っていて、警察にも協力して難事件を解決している「探偵少女」の呼び声が高い『剣崎比留子』に誘われ、「映画研究部」の夏合宿に参加する事になる


しかし、その「映画研究部」の夏合宿には、「男子部員達が女子部員達を襲っている」という危ない噂があった


合宿初日の夜、近くで開催されていたイベント「サベアロックフェス」の参加者と思われる死者達が、ゾンビさながらの屍人となって押し寄せて来て人間達に襲い掛かる


屍人達は肝試しに参加していたメンバー達にも襲い掛かり、映画研究部員の『下松孝子』、演劇部員の『星川麗花』、神紅大学OBの『出目飛雄』、そして映研メンバーの『静原美冬』を助けようとした『明智』が犠牲となってしまう


かろうじて逃げ延びた『葉村』と他のメンバー達は、合宿先である「紫湛荘」に立て籠もらざるを得ない事態となる


翌朝、「紫湛荘」の一室において予告状とも取れるメモと共に、映画研究部の部長である『進藤歩』が屍人に襲われたとしか思えない他殺体となって発見される


だが、現場は館の周囲を屍人に囲まれた「クローズド・サークル」の上に、部屋に鍵の掛かった「二重の密室」であった


さらに「屍人には知性がない」事が明らかとなり、殺害現場には屍人達は入って来れない事から推理困難な状況となってしまう


各々注意深く行動していたが、何者かに睡眠薬を盛られた為、メンバー達は眠り込んでしまい、明朝になり神紅大学OBの『立浪波流也』の遺体が発見される


『立浪』の遺体には、屍人達に襲われたような噛み跡があり、頭部は無惨に打ち砕かれていた


さらに、「映画研究部」のOBで、「紫湛荘」のオーナーの息子である『七宮兼光』の部屋を屋上からビデオカメラを使って覗いた所、『七宮』が毒殺された事が判明する


屍人達にバリケードを突破されて二階にも入り込まれ、皆で脱出に向けて協力しようとした時に、探偵役を務める『比留子』が推理を述べる


『比留子』は消去法で1人ずつ容疑者を除外して行き、最後に『葉村』と『美冬』の2人に絞られた時点で『美冬』が自白した


『美冬』は、幼馴染であった年上の女性『沙知』がサークルの夏合宿で弄ばれて自殺した為、その復讐を果たそうと映研に入り込み機会を伺っていたのだ


『美冬』がすべての犯行の詳細を告白したのと同時に、屍人達がバリケードを突破して雪崩れ込んで来た為、一行は屋上へと退避する


そこに、屍人化した『明智』が現れてメンバー達に襲い掛かるが、『比留子』の活躍により明智は「紫湛荘」から転落する


救助のヘリが到着し、感染経路の封じ込めに成功した事もあり、世間を騒がせたゾンビ事件は解決へと向かい始める


警察による封鎖作戦により、死者数は5200人強と予想されていたよりも遥かに低い被害に抑えられた


しかし、映研部員の『重元充』の遺体は最後まで見付からず行方不明とされた



ミステリー小説衝撃度数

★★★★★★★★ 8





物語序盤で主人公的キャラを葬り去る荒業に心底驚いた


また、続編ありきで書かれている為、敢えてすべての伏線を回収していない所にこの作家の巧みさをみた


ミステリー小説にゾンビを登場させると普通はシラケるが、この小説に関しては屍人達が非常に良い味を出している


これも書き手の才能による所が大きい


しばらくぶりに続編の出版が楽しみになるミステリー小説と出会えた気がする