イニシエーション • ラブ(乾くるみ)
イニシエーション • ラブ
《side-A》
僕こと『鈴木』は、友人の『望月』から代役で呼ばれた合コンで出会った『マユ』に強く惹かれるが、女性に対して奥手である性格が邪魔をして、それ以上の言葉を交わす事が出来なかった
その後同じメンバーで誘われた海水浴で『マユ』と再会した『鈴木』は、ふとしたきっかけで『マユ』から連絡先の電話番号を教えて貰う
二週間後、意を決して電話を掛けた所、『マユ』も自分の事を気に掛けてくれていたようで、デートの約束をなんとか取り付ける
毎週のデートを重ねるうちに『マユちゃん』、『たっくん』と呼び合うようになった二人は、周囲にはまだ二人の関係を隠していた
そんな最中に合コンメンバーでのテニスにそれぞれ誘われて参加するが、友人の『北原』と親しげにする『マユ』を見て『鈴木』は激しく嫉妬する
その夜、『マユ』から受けた電話で、『鈴木』と親しげにしていた『マユ』の友人の『和美』に対して、『マユ』が実は嫉妬をしていた事を聞き、お互いの愛情を確認した二人は電話で告白を交わす
さらに『鈴木』は「会いたい!」と率直な気持ちを吐露し、『マユ』の「来て!」という返答に応える形で『マユ』の家へ駆けつけ、そしてついに二人は結ばれる
その後『鈴木』と『マユ』は互いの家を行き来するようになり愛を深め合う
11月のある日、ドライブ先で入ったラブホテルでの会話で、『マユ』からクリスマスイブの予定を尋ねられる
「夜景の見えるレストランで食事をした後お泊り」という理想的なプランを話し合い、『鈴木』は駄目元で予約の電話をホテルへ入れてみた所、たまたまキャンセルがあったとの事でXmasデートが実現する
そしてイブの夜、二人は食事の後ダブルルームでプレゼント交換をし、愛を確かめ合う
『鈴木』はこれ以上ない幸福感を味わったのだった
《side-B》
『マユ』との関係を優先し、東京の会社から貰った内定を蹴り地元静岡の企業に就職した『鈴木』に、東京の親会社への二年間の出向の話が持ち上がる
「新入社員から成績優秀者が選ばれエリートコースに乗せる」という会社方針の為『鈴木』は断り切れなかった
『鈴木』は『マユ』に相談し、『マユ』は渋々ながらも遠距離恋愛を決意し、『鈴木』は毎週会いに帰って来る事を約束する
『マユ』との愛を支えに離れ離れの生活を続けていた『鈴木』は、経済的負担に加え肉体的精神的負担も重なり徐々に疲弊して行く
そんな中、東京での同僚で見た目も中身も完璧な女性である『石丸美弥子』と仕事を通じて意気投合する
一方で、三週間ぶりに会った『マユ』から「生理が来ない………」という事実を告げられ『鈴木』は動揺する
意を決して結婚を持ち出した『鈴木』だったが、「親や親戚に婚前交渉があった事を知られるのが嫌」という理由で『マユ』はこれを拒絶する
ある日、『鈴木』を昼食に誘った席で、『美弥子』は『鈴木』への想いを打ち明ける
『マユ』の事を思う『鈴木』は理由も言わずに拒否するが、心は大きく揺れていた
翌週末、『マユ』は産婦人科の検査を受け、妊娠三ヶ月であると診断される
『鈴木』は中絶を決意し、さらに翌週『マユ』に中絶手術を受けさせる
この沈んだ気持ちを紛らわせるべく仕事に没頭する『鈴木』だったが、大きな仕事を上げたその日に『美弥子』から飲みに誘われる
酒の席で彼女がいる事を『美弥子』に看破され、さらに「変わるという事は悪い事ではない」、「考えを変えない事は成長を止める事だ」と諭される
『美弥子』は元彼から別れの時に言われた「お前に取って俺はイニシエーション(通過儀礼)だった」という言葉を引用し、『鈴木』と『マユ』の関係が「イニシエーション・ラブ」であれば自分にもまだ望みがあると『鈴木』に告げる
堕胎の件以降、『マユ』に対して気持ちが疎遠になっていた『鈴木』だったが、義務感を振り絞り『マユ』に会いに静岡へと帰る
直接顔を見る事で改めて彼女への愛を確認しつつ、「負担が大きいから毎週でなく隔週で会いに来る事にしたい」と『マユ』にお願いし彼女も快諾する
その翌週、『鈴木』は『美弥子』からショッピングに誘われるが、ショッピングを終えた後、半ば強引にホテルへと誘われ『美弥子』と関係を持ってしまう
『マユ』と会うのを隔週にしたのをよい事に、また『美弥子』からも「遊びでいいから」とも言われた『鈴木』は、二股状態をしばらく続けて行くうちに『マユ』と『美弥子』との関係は徐々に逆転して行く
そしてある日、『鈴木』は『マユ』に対して「美弥子」と呼んでしまうという大失態を犯し、咎める『マユ』に対して逆ギレした『鈴木』はとうとう別れを告げて部屋を後にする
『美弥子』との仲が社内で噂されるようになり、また『マユ』との為に確保しておいたクリスマスディナーをキャンセルした『鈴木』は、『美弥子』にクリスマスの予定を尋ねる
すると『美弥子』は「自分の家へ招待したい」と言う
クリスマスの日、『鈴木』は両親に紹介され、居心地の悪さを感じながら食事を済ませて『美弥子』の部屋へと上がり込む
両親が階下にいる所で『美弥子』とイチャつくという背徳感を覚えつつ、別れた『マユ』への想いが馳せた所で物語は衝撃の結末を迎える
ミステリー小説衝撃度数
★★★★★★★★ 8
「乾くるみ」の二大ヒット小説の一つ
人によってはこれを恋愛小説と捉えるのだろうが、自分に取ってこの小説は殺人なき立派なミステリー
ラストに待ち受けている衝撃はなかなかの破壊力を秘めている
思い返してみれば、自分のこれまでの恋愛はすべて「イニシエーション • ラブ」だったのかも知れない
遠い昔を思い出しながら最後まで楽しく読めた
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