青の炎

湘南に住む『櫛森秀一』は名門高校に通う優等生

ある日、10年前に母と離婚した養父の『曾根』が現れる

横暴な『曾根』から『母親』と『妹』を守る為、『秀一』は法的手段に訴えたが、大人の社会の仕組みは『秀一』のささやかな幸せを返してはくれなかった

『母親』の体のみならず『妹』にまで手を出そうとする『曾根』に、ついに『秀一』の怒りは臨界点に達する

激しい怒りは静かな憤怒へと変わり、「青い炎」が『秀一』の心に燈った

自らの手で『曽根』を殺害する事を決心した『秀一』は完全犯罪を計画し実行する

こんなにも切ない殺人者がかつていただろうか

17才の少年が望んだもの、それは平凡な家庭とありふれた愛、ただそれだけだった

ミステリー小説衝撃度数

★★★★★★★★★ 9

数々の名作秀作ミステリーを世に送り出して来た、天才『貴志祐介』が放った青春クライムサスペンスミステリー

物語の中で主人公の少年は実は二人の人間を殺害するのだが、正直二人目の殺害は彼の人生には必要のないものだった

小説の後半、前半に比べて少し書き急いでいる感はあるものの、『貴志祐介』が少年犯罪を描くとここまで美しくなるものなのかと驚愕した

しばらくぶりに殺人犯を心から応援したくなる物語と出会えた気がする

ラストページ、人生で最後の決断をする少年の描写に思わず涙した